▼作者
てまり様
▼登場人物
・女 喫煙者。クール女子。過去の男を忘れるためにタバコを吸う
・男 非喫煙者。優男。泣くのを隠せるから雨が好き
▼シナリオスタート
女・モノローグ: 雨は嫌い。せっかくのタバコが、湿気(しけ)ってしまうから
男・モノローグ: 雨が好き。憂鬱だと文句を言いながらも、外を見つめる君が楽しそうだから
女: ・・・マズい
男: 煙草が?
女: うん
男: そんな変わるもの?
女: わかんない。気分的なものかも
男: でも楽しそうだよ
女: 誰が?
男: 君が
女: ・・・目が、湿気ってるのかな?
男: 誰の?
女: アンタ
男・モノローグ: 僕は覚えてるよ。あの日も、こんな雨の日だった
女・モノローグ: 土砂降りの中。呆然と立ちつくすアンタから、目を離せなかった
男: 僕は好きだけどね
女: 雨が?
男: そう
女: なんで?
男: 泣いててもわからないでしょ
女: 泣きたいの?
男: どうだろう
女: 泣きなよ
男: どうして?
女: 雨だから
男: なるほど
女・モノローグ: あの日のアンタもそう言って、声も出さずに泣いてたんだよ
男・モノローグ: 自分の思惑と反して、去った人がいた。引き止める術も、我儘に訴えることもできなくて
女: 泣く?
男: 泣かない
女: なんで
男: なんでも
女: ・・・意味わからん
男: はは。ねぇ、タバコって美味しい?
女: マズい
男: 雨だから?
女: 晴れてても
男: ふぅん・・・。ねぇ、僕にも吸わせてよ
女: ダメ
男: なんで?
女・モノローグ: 吸ったら最後、戻れない。依存性とかそんなんじゃなくて
男・モノローグ: 吸ったらきっと思い出す。あの日去った、あの人を
女: カラダに悪いから
男: それ、吸ってる人が言っても、説得力ない
女: 元々は吸う予定じゃなかったんだよ。アタシも
男: へぇ。でも吸っちゃったんだ?
女: うん
男: 何かあったの?
女: ・・・別に
男: ・・・下手くそ
女: 何がよ
男: 噓をつくのが
女: ・・・うるせ
男・モノローグ: 君は言った。忘れるために吸ってるんだって
女・モノローグ: カラダの芯までこびりついた、アイツの匂いをタバコと雨でかき消して
男: そろそろ前に進みたいな
女: ・・・うん
男: 妙案がある、って言ったら、信じる?
女: 別に疑う理由もないでしょ。何?
男: 付き合おうか
女: ・・・なんでまた
男: (食い気味に)なんでまた喫煙者?
女: ・・・・・・・・・そう
男: 別にタバコを吸ってる人を選んでるわけじゃないんだけどね
女: ・・・やめとこ
男: なんで?
女: 誰かの代わりなんてごめんだから
男: そんなこと思ってないのになぁ・・・
女・モノローグ: 今だって、こんなに近くにいるの意味がわからないのに。これじゃ、お互い忘れられない
男・モノローグ: それでも、こんなに近くにいるのは、きっと求めあっているんだと思うんだよ
女: 嘘ばっかり
男: じゃあ・・・これで信じる?
ト書き 男→女:キスする
女: ・・・・・・は?
男: (楽しそうに)うーん、苦い
女: 馬鹿なの?
男: 酷いなぁ
女: ・・・いいの?
男: 何が?
女: 絶対、思い出して泣きたくなるよ?
男: その時は泣かせてよ
女: アホか。過去の女の涙を彼女の前で流すな
男: 彼女になってくれるの?
女: ・・・あ
男: (笑う)
ト書き 女→男:蹴る
女: くたばれっ!
男: 痛ったい!
女・モノローグ: 雨は嫌い。だけど、こういう始まり方も悪くない
男・モノローグ: 雨が好き。君となら、涙を流すためじゃなく、空を見上げるためだと思えるから
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