▼作者
真野ショウタ様
▼登場人物
・女
・人形(兼役:父)
▼シナリオスタート
人形:「人形とこどもって似てると思いませんか?」
女:「似てる? まあ、似てなくもないかな」
人形:「似てるんですよ。どうしてだと思います?」
女:「どうしてって、こどもが遊ぶから友達になれるようにじゃない?」
人形:「違いますが、いい本質を見つけましたね。そうです。人形はこどもに似せて作られたのです」
女:「へえ」
人形:「そして、役割は身代わり。生贄です」
女:「生贄?」
人形:「ええ。生贄という文化に財産として価値の高いこどもを用いる話はよくあるでしょう」
女:「あー。こどもをこれ以上減らせないから人形で代用したみたいな話ね」
人形:「子供って漢字で書いたら分かりやすいですよ」
女:「お供え者ね」
人形:「身代わりの身代わり。似ていて当然ですよね。人の形だけですから価値は低いですが」
女:「その割にあなたは人形の癖に全然こどもっぽくないよね」
人形:「それはあなたが大人になったからですよ。昔はもっと似てました。特に私はオーダーメイドでしたから」
女:「そうかな」
人形:「まあ、もう大人になってしまわれるのですが」
女:「ごめんね」
人形:「謝ることではありません。少し寂しいですが、悪くない寂しさです」
女:「……本当に魔法は消えてしまうの?」
人形:「消えてしまわないといけないんです。大人になるんですから」
女:「そっかぁ」
人形:「長いようで短かったですね」
女:「お父さんよりも長く一緒にいたんだよ。信じられる?」
人形:「人生というのは、重みがありますね」
女:「そうだよね」
人形:「あなたが無事に大人になれて、良かったです」
女:「……ありがと……」
人形:「最期に、お願いがあります」
女:「最期か……。うん、何でも言って」
人形:「私を、お父さんと呼んでくれませんか?」
女:「…………いいの?」
人形:「はい。お願いします」
女:「あなたが、言っちゃ駄目だって言ったのに……」
人形:「お願いします」
女:「……お父さんをちゃんと覚えてなさいって、言ったのに」
人形:「……一度だけ、お願いします」
女:「私、我慢してたんだよ……」
人形:「お願いします。娘を送り出す為事を、私に任せてください」
人形:「私は今日許されるために、今まで我慢してきました」
娘:「……お父さん」
父:「……結婚おめでとう」
娘:「ありがとう……お父さん……」
人形:「……」
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