▼作者
お洒落なやかん様
▼登場人物
・田中
・幽霊
▼シナリオスタート
—不動産屋にて
田中:はい・・・、はい・・・・安ければどこでもいいです。
田中:え、ワンルーム一万九千円ですか? じゃあそこで
—引っ越し当日
幽霊:あら、新しい住人? どうせ家賃の安さに目が眩んでやってきたんでしょ
田中:あ、はい
幽霊:え?
田中:どうも。今日からお世話になります
幽霊:え? あなた私の事が見えるの?
田中:え、今俺にしか見えないとかそういうドッキリ掛けられてます?
幽霊:それはちょっとよく分からないんだけど、なんで私の事見えるの?
田中:こっちが聞きたいんですけど、まぁなんかそういうのがあるんじゃないですか?
幽霊:あの、大変申し上げにくいのですけど、私幽霊・・・ですよ?
田中:はい、知ってます
幽霊:ちょっと冷静すぎじゃない?
田中:そうですか? 全然焦ってますけど
幽霊:いや普通に幽霊と会話してる時点で焦ってないよね?
田中:冷静を装わないと呪われるかと思ったんで
幽霊:確認だけど、私が幽霊って分かってる?
田中:はい、そんな首が九十度に曲がってる人、幽霊か寝違えた人しかありえませんから
幽霊:いや寝違えたとしても首九十度に曲がらないでしょ
田中:ずっと首曲げてるの痛くないんですか?
幽霊:この流れでそれ聞いちゃう? あなた実は冷静なんじゃなくてただの馬鹿なんじゃ・・・
田中:あ、次馬鹿って言ったら一生金縛りにあわせますよ
幽霊:それ幽霊側の脅し方じゃん
田中:俺も幽霊なんで
幽霊:え!? マジで!? 嘘!?
田中:嘘です
幽霊:眼鏡かち割るぞこら
田中:幽霊だから物体触れないのでそれは多分無理だと思います
幽霊:よく分かってらっしゃるっ! ・・・なんだろう、すごい腹立ってきた
田中:で、幽霊さんはなんでここに居るんですか。今日から俺の家なんですけど
幽霊:それは・・・うん。ちょっと色々あって・・・。追い出そうとはしないで、ここ結構気に入ってるの
田中:言いたくないという事は恥ずかしい理由なんですね。理由によっては追い出しますけど
幽霊:やめてっ! ここじゃなきゃダメなのよ。それに恥ずかしい理由だからあんまり追求しないで
田中:俺の予想なんですけど・・・
幽霊:追求するなって言ってるじゃん
田中:ちょっと黙っててください、追求してるんで
幽霊:追求してるじゃん! わざわざ言う必要ある!?
田中:あ、お化け屋敷のお化け役の面接に落ちたとか
幽霊:君は名探偵か!? ってなんで言い当てちゃってるのよ!
田中:俺、幽霊なので何でも分かります
幽霊:真面目な顔して嘘つかないでくれるかな、次嘘ついたら一生金縛りにあわすよ!?
田中:良いですけど・・・金縛りするなら一分とかにしてください
幽霊:こういうのでオーダーできる立場じゃないの分かってる?というか金縛り一分ってちょっと寝苦しいだけじゃん、ほぼ快眠よ!?
田中:はい、快眠したいので一分でお願いします
幽霊:逆に一分金縛りになってもいいのね
田中:それで、なんで幽霊がお化け役の面接を受けようと思ったんですか?
幽霊:・・・まぁそうね、(窓際に立って指をさしながら)ほら、あそこの遊園地見える? あそこのお化け屋敷すごい怖いって有名なのよ。だから昔から人を驚かすのが好きな私が、お化け役にならなきゃ意味がないじゃない? 死んでも夢を叶えたかったというか。まぁ誰一人私の事認識すらしてなかったんだけど、ここは家賃も安いし窓から遊園地が見えるからね。
田中:認識されていないのにちゃんと面接に行こうという考えになるのがアホでおもしろいですね
幽霊:君、さっきからストレートすぎだから、ちょっとお姉さんの胸にグサッと来てるから
幽霊:(ため息)はぁ・・・。ところで聞いてなかったけど君名前は?
田中:田中です
幽霊:地味な名前ね
田中:全国の田中さん集めて念仏唱えますよ
—数年後
田中:あの、数年経った今で申し訳ないんですけど、いつになったら成仏してくれるんですか
幽霊:多分人を驚かせたら?
田中:だったら一生無理ですね
幽霊:段々とその煽りにも磨きがかかってきてるわね。でもどうしてそんなこと急に?
田中:そろそろ引っ越そうかと思って
幽霊:え・・・?
田中:こっちには大学に通うためだったので。就職先は地元の会社に決まったし
幽霊:なによ・・・急に寂しくなるわね
田中:そうですね
幽霊:最後に、ちゃんとお祓いしていきなさいよ。随分と長く付きまとっちゃったし
田中:分かりました
幽霊:地元に帰っても、ちゃんとやるのよ
田中:はい、今度はいわくつきじゃない家に住みます
幽霊:そうね、そうしなさい
田中:まぁ・・・・・・・・・・・・全部嘘なんですけどね
幽霊:・・・呪うわよ
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